北日本周遊記
[初日(土曜日) 横浜ー仙台 その3]
・仙台駅 [13:10-14:04]
到着後一息ついて時刻は13:30分。仙山線の列車まで時間があるので、観光に際し無駄な荷物を置いていくことにした。
…とそれはいいのだが、駅構内・構外ともに多数のコインロッカーがあるにもかかわらず殆どが使用中で、空きが出ても一瞬で埋まってしまうような状況。しばらく空きが出ないか空きを確認できるモニターとにらめっこしていたが、どうも無理そうである。
ー「これは困った」
このまま待っていても埒が開かないので、穴場と言われるエスパル(S-PAL)東館1Fのコインロッカーへ行くことにした。駅レンタカーコーナーに併設されたこの場所は、設置されてからまだ日が浅いこと、アクセスが難解(中央改札からは駅を回り込んだ上でエスパル内のエレベーターを使わないとたどり着けない)であることから人気が無い様だ。
回収時にも手間がかかるのが玉に瑕だが、そのお陰であっさりと利用することが出来たのだから良しとしよう。
ロッカー捜しに手間取っているうちに発車時刻が迫っていたので急ぎ改札へ。
コンビニで食料を調達しつつ、足早に仙山線ホームへと向かった。
・仙山線 [仙台ー山寺]
仙台14:04発ー山寺14:56着 E721系 4両 3839M
仙山線はその名の通り仙台と山形を結ぶ路線で、日本で一番最初に交流電化したことで知られている歴史深い路線だ。
当初は名の通り仙台と山形を結ぶ目的で運行されたが、近年の高速バスの台頭※1仙台ー山形間を山交バスと宮交バスが76分・は930円で結ぶ。運賃では鉄道に分がある(Wきっぷ使用で片道770円)ものの、最瀕時4分ヘッド・広瀬通り経由と利便性の面で圧倒的に差をつけられている。により、仙台近郊輸送や観光輸送へとシフトしている。
複雑怪奇な快速種別や長大トンネル、山岳路線さながらの勾配などネタに尽きない路線なので、ちょっとしたデータなどを作りつつ旅行記をまとめて行くことにしよう。
まず、仙山線の種別・停車駅を、路線図を基に見ていこう。
快速列車が3系統あるのが真っ先に目につく。仙台ー山形の全区間で快速運転するA快速・仙台ー山寺間で快速運転するB快速・そして愛子ー山形間で快速運転をするC快速とそれぞれ分類されてはいるものの、案内上は全て「快速」として扱われる。需要に応じて細かく対応しているのだろうが、いかんせんややこしい。
仙山線は伝統的に快速の種別が多く、一時期は5系統以上もあったそうだ。
また普通列車が愛子までの区間列車と、山形までの全区間列車に大別されるのも特徴的だ。本数を見ても分かる通り、愛子から先は急激に本数が少なくなる。快速通過駅においては列車間隔が2時間以上空くこともザラであるというから、驚きだ。(仙台ー愛子間は概ね毎時3本 (快速含む))
続いて仙山線の標高データも見てみよう。(Googleマップデータを元にExcelで作成)
図を見ると一目瞭然だが、都市間輸送路線・都市近郊路線にして起伏に富んでいることが分かる。
路線内には極めて急な勾配(最大で30パーミルを越える)が連続的に続く箇所が存在し、平坦な区間など殆ど存在しない。常に登っているか下っているか…と言った具合であり、乗っていて非常に楽しい。
もっとも、この勾配とこの路線が置かれた環境によって秋は大変苦労することになるのだが…※2秋から冬にかけて落葉により線路が覆われ、車輪が空転する事象が発生する。。
さて、乗車するのは14:04分に仙台を発車する「快速」山形行きだ。
この快速は最速達タイプで、上記路線図だと赤色に相当する。仙台を出ると北仙台・国見・陸前落合・愛子・作並・山寺の順に仙山線の主要駅に停まって行く。
列車はE721系の4両編成で、仙台に到着するとすぐにボックスシートが埋まった。やはりビジネス客よりも観光客が目立つ。
ひとしきり案内が終わり、最近になって新たに導入された「すずめ踊り」の発車メロディが流れると、列車は定刻に発車した。
仙山線は仙台を出てからしばらく東北線と並行し、梅田川の手前で東北線をまたいで大きく西にカーブする。その後駅の入口が公園の中にある東照宮を通過し、北仙台までは仙台平野の市街地を走る。
続く北山からは仙台平野のへりに沿いつつも、少しずつ高度を上げて行く。
上り坂を駆け上がりつつ2007年に新設された東北福祉大前を通過し、14時15分、国見駅に到着。この駅では対向の仙台行きとすれ違いを行うために3分停車するという。ー都市圏を走るにも関わらず全線に渡って単線というのも、仙山線の特徴と言えるだろう。
さて、列車は国見峠を越えるとトンネルを通りながら再び高度を落としていく。
ーつくづく忙しい路線である。景色が目まぐるしく変わる路線というと京阪の京津線が良く挙げられるが、仙山線も負けてはいないと思う。
閑話休題。
14時25分。列車は近郊とローカルの分かれ目である愛子に到着。線路沿いに吸い付くようにして形成された住宅街もここで終わり、この先は本格的な山岳路線の様相になる。
愛子を出るとうんと駅間が長くなり、陸前白沢を過ぎるころには周囲は木々ばかりに。その後も右に左にとカーブを切りながら、列車はぐんぐんと高度を上げていく。
温泉街やニッカウヰスキーの蒸溜所が人気の作並を出て、秘境駅と名高い奥新川を通過すると列車はいよいよ奥羽山脈横断に差し掛かる。
仙台から40分ー山々に囲まれながらもなんとか高度を稼いでトンネルを避けていた仙山線もついに限界に達し、仙山トンネルに突入する。
この宮城県と山形県を結ぶ仙山トンネル、通称面白山トンネルは1937年に開通し、当時国内3位の長さを誇った(全長5,361m)ことで知られている。(当時1位が清水トンネル、2位が丹那トンネル)
面白山の直下を貫く単線トンネル内(信号場除く)は走行音が反響して「ガーガー」と言う爆音が車内に響く。
その音量たるや、ボックスシートで向かい合った相手の声も聞き取れないほどである。
話はそれるが、仙山線は乗っていて非常に賑やかだ。(車内が、という訳では無く走行音の話)
旧型車が山道をごとごと行くのも雰囲気があって良いが、新型車が高速でかっとばすのも、中々に面白い。
数分の間爆音につつまれた後、列車は山形県へ。面白山高原駅を通過すると、今度は扇状地が広がる山形盆地に向けて下り始める。
.
14時57分、最上川水系の立谷川を渡ると視界がひらけ、遠くに山寺が見渡せるようになる。
ー今からあそこまで登るのか…考えると大変な気持ちになるが、あの場所からの景色は間違いなく綺麗だろう。そう思うと心が弾む。
列車は定刻より一分遅れて山寺駅に到着。多数の観光客を降ろすと、山形に向けて足早に走り去って行ったー。
・山寺駅 [14:57]
山寺駅は全ての列車が停車する。愛子から先の各駅の中では随一の利用客数を誇り、過去には「特快」ホリデー仙山も停車していた。1面2線のシンプルな構造だが、Suica対応、みどりの窓口併設など中心駅にふさわしい設備が整っている。
山寺の参拝図が描かれた駅名板や座布団が敷かれた和風の待合室が気持ちを盛り上げてくれる。
駅舎も寺社風の造りになっており、東北の駅百選にも選ばれている。
駅前にぽつんと置かれた丸型ポストが可愛らしい。
ひとしきり駅を見渡した後、駅の観光案内で参拝ルートを確認。
次回、いよいよ山寺へと参る!(参る…)
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注釈
1. | ↑ | 仙台ー山形間を山交バスと宮交バスが76分・は930円で結ぶ。運賃では鉄道に分がある(Wきっぷ使用で片道770円)ものの、最瀕時4分ヘッド・広瀬通り経由と利便性の面で圧倒的に差をつけられている。 |
2. | ↑ | 秋から冬にかけて落葉により線路が覆われ、車輪が空転する事象が発生する。 |